番茶~日本人のソウル飲料~(12/12)「日本人の日常茶には番茶」
- s.kazuki
- 2022年1月30日
- 読了時間: 4分
〇終章 おわりに
私は番茶こそ1000年先も残っていくものと信じている。
その理由は、番茶は地味だがあっさりしているからだ。現代はあまりに刹那主義が過ぎるところがあることは触れた。刹那的なものはおよそ刺激が強くなる。桃や李の花は華やかで美しいが、松や柏が四季を通じて青々とした緑を変えないのには及ばない。華やかで儚いものはあっさりして長久なものには及ばないし、早く熟すものは、遅く実るものには及ばないものだ。
そういった意味で、番茶はあっさりしており長久なものになりうる。だから、現在細々とでも残り続けてきた。
前章で色々と述べたが、私はどうしてもこのまま日本茶が衰退していくのが嫌なのだ。だから、今まで起きてきたこと、今行っている対策(?)を見ると悔しく思う。
もちろん、ここまで述べてきたことは反対も多い事は承知している。人を雇っていればその人たちの雇用を守らねばならない。今までのやり方をもうこの年齢で変えるのは現実的に難しいなど当然あるはずだ。しかし、だからと言って現状を変えていくことやそれを考えることをやめてはならない。
業界の高齢化が進んでいる今こそ、私たちみたいなエネルギーと勢いある若い者が「自分らが変わります」とやらなければならない。お茶は私たちの最も身近な存在だからこそ、誰かがこれをやらねばならない。そう思うからこそ、小さくとも活動を続けている。
生産方法などにも言及したが、生産者にだけ今まで述べてきたことを求めるのは違うと思っている。例えば、品評会に出す際にはその審査基準に沿った作り方をしなければならない。その審査基準も変えていかねばならないし、それを売る側も何を良いとする立場なのかよく考えて消費者に説明する責任がある。商人として、消費者とのコミュニケーションがもっと必要である。要するに、日本茶に関わる人が皆真剣にそれぞれ考えるべきなのだ。ここには消費者も入っている。生活に密接に関わる日本茶だからこそ消費者もどうかなんとなくではなく、赤裸々な感想やニーズを生産者や店に伝えてほしいと願う。
また糖尿病やがんについても、患ってからでは体力も時間もお金も奪われる。対処療法ではなく、予防療法にもっと力を入れるべきではないだろうか。日本の予算を圧迫し続ける医療費は大きな問題だ。高齢者が増えている現状では国の医療保険システムの崩壊すらあり得るだろう。これで税金も上がったのではたまったものではない。
予防療法の選択肢の一つとして、無農薬有機低肥料栽培の番茶が役に立てるはずだ。
近年、世界では日本食への関心が高まりつつある。日本茶もその関心の一つだろう。
2017年2月から対EUとのEPA(経済連携協定)が発効している。日本茶の輸出に関して言えば段階的に2023年には関税が0になる予定だ。これによって、今よりも日本からEUに対しての茶の輸出が活発になっていくかもしれない。しかし、ヨーロッパでは農薬や硝酸塩の問題に関して一般的に日本よりも関心が高い。残留農薬などの基準も日本より厳しい所も多い。したがって、輸出に有利になったとしてもそこで弾かれる可能性があり、硝酸塩含有量において毒物扱いもされかねない。こんな悔しい話はない。日本の茶が世界にもきちんと誇れるようにしていきたい。
日本茶というものが現実的にこの先売れるようにしていくには、茶の元来備える性質を消したり何か「添加」するのではなく、性質を「深化」させることこそ肝要であると思う。
どんな時、場面であっても少なくとも「飲みたくない」とは思われたくない。
思わずもう一杯、いつも飲む日常茶が今必要だ。それを担えるのは日本人のソウル飲料「番茶」であると考える。
長い緊急事態宣言で何も動くことができずに、その時に今思うことを書こうと思い立って全12回にわたってお送りしてきました。
かなり好き勝手に書いたので、批判があることも重々承知しています。
しかし、皆さんに番茶のことを知って頂きたいのもそうだが、会社としての方向性の宣言を改めてする場になったと思います。
全12回で述べてきたことは私の信じるところであり、これでどこまでいけるか分からないので、ただ一心不乱にやるのみと思っています。
全12回お付き合いいただいた方はありがとうございました。
秋番茶を飲みながら
雅南 鈴木和希
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香りと飲みやすさにこだわった
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是非仕事の、勉強の、遊びの、人生のお供に...。
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