top of page

番茶~日本人のソウル飲料~(5/12)「農薬が茶や人体に与える影響」

  • 執筆者の写真: s.kazuki
    s.kazuki
  • 2021年11月16日
  • 読了時間: 6分

〇2章 現在の日本茶事情

 

 はじめにでも述べた通り、番茶というと下級品というイメージか知らないという人が多いというのが現状だ。

 その証拠に新茶の時期だけ比較的茶がもてはやされているように思う。日本茶は煎茶以外にも沢山あるにも関わらず、特に東側では巷に溢れているのは煎茶ばかりだ。とりわけ「深蒸し」「旨み」というフレーズはどこか高級感が感じられるのかよく目にする。

 

 実はこの「旨み」というのは極めて危険な文言であると考える。


 旨みは茶本来のもので出ているならまだしも、ほとんどが肥料の多投によって生み出されている。すなわち、茶において旨みがあるといわれたらそれはほとんどが肥料の味といってよい。旨みはつまりアミノ酸のことであり、アミノ酸を感じたければお吸い物などで摂る方がよほど良いのではないだろうか。

 また、肥料の多投は硝酸塩の多量摂取に繋がり、由々しき健康被害の懸念が大いにある。さらに、肥料のアミノ酸を狙って害虫が多く寄り付き、農薬を撒かねばならないという負のスパイラルに陥る。


 これは早急に変えていくべきというのが私の主張である。したがって、茶においては、「無農薬」「有機低肥料(無肥料が理想)」栽培が良いと考える。

 では、それぞれ何故無農薬で肥料も少ない方が良いかということについて説明していく。




農薬について

 

 主に茶樹にストレスをかける点から、農薬(とりわけネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ農薬))は不使用が良い。

(補足)-----------------

ネオニコチノイドとは、植物が己の身を守るために自ら生成する天然の農薬であるニコチンを模した農薬である。この名前は系統名であり、現在日本ではイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリドの7種が登録されている。

-------------------------

 


 無農薬の茶を求めるのは2つの理由がある。


 1.虫がいなくなってしまい、茶樹にストレスがかからなくなる(→香気生成の妨げになる)

 2.主に中枢神経系へ障害の危険がある(→パーキンソン病やアルツハイマー病への懸念)


 個人的には健康への懸念よりも、香りが失せること、飲んだ時に喉に酸性系の痛みを感じて飲みにくくなるために一切の使用をやめてほしい。

 近年では、「減農薬」というものを冠する商品などがあるがこれには注意が必要だ。

ネオニコ農薬は残留性が高く、使用回数を減らせるため減農薬として用いられることもある。特に茶は、害虫が発生すれば、収穫7日前までなら害虫ごとにネオニコ農薬を7種類まで使える。このため異常気象で害虫が多く発生したら、多く使われることもある。

 減農薬を謳っているからといって、必ずしも安全性が高くなっているという訳ではない。



―香りへの影響

 

 植物は動物と違い、移動の自由がない。故に、害虫や気温など周囲の環境からストレスを受ければ生き残るために様々な香りを生成する。よって、香りの良いお茶を求める場合、茶樹へのストレスが鍵となる。


 無農薬の茶の香りへの関係について、香り研究の世界的権威である京都大学名誉教授の坂田完三さんの論文を引用する。

「茶樹ばかりでなく、植物は一般に昆虫の食害を受けると様々な香気成分を発散することが知られ、その時発散する特定の香気成分がその害虫の天敵となる昆虫の誘引物質となっていることもある。そのため、無農薬で栽培すると、食害された茶樹はストレスを受けて、身を守るためのいわば武器としてより多くの香り成分を発散させる準備を進めるのである。だから、無農薬栽培をすれば香りの高い茶をつくれる茶葉を生産できるのである。」


 台湾の「東方美人茶」やインドの高級紅茶「ダージリンセカンドフラッシュ」はウンカという虫に食害されることで、マスカットのような芳醇な香りが生成される。上手に利用することで、茶の害ではなくなるのだ。

しかし、害虫”大量発生”が問題との声もあるだろう。これに関しては、肥料が大きく関係していると考えられており、詳しくは肥料の項で記述する。




―人体への影響

 

 主にネオニコ農薬を体内に摂取することで神経伝達に異常をきたし、パーキンソン病やアルツハイマー病などに繋がる可能性がある。

 ネオニコ農薬は、「アセチルコリン(神経伝達物質)と結合するはずの受容体にとり入って、昆虫の神経を麻痺させる毒薬だ。受容体がアセチルコリンに代わってネオニコチノイドと結合すると、伝達すべき信号が交錯してしまう。この最初の兆候として方向感覚の喪失、短期記憶喪失、食欲の減退などが現れ、その後に震え、痙攣、麻痺と進んで最後には死を招く。」(飯田辰彦著『日本茶の「未来」』 参考)




 ネオニコ農薬を使用した食物は、その濃度が低くても水に溶けて作物の隅々まで浸透する特徴がある。したがって、残留成分は洗っても落ちず(茶はもとより洗わない)、残留量の多い食物を食べ過ぎると健康を害する恐れがある。農薬などの毒性薬物が食品に残留する場合、「人が一生の間、毎日とり続けても健康に影響しない量」の指標として「一日摂取許容量」がある。ネオニコ農薬の一日摂取許容量は0.012~0.53mg/kg/日で、日本では欧米とほぼ同じ量に設定されている。

 しかし、「人が摂取しても安全と評価した量の範囲」である食品ごとのネオニコチノイド系農薬残留基準は日本では非常に高く設定され、茶葉や一部の果物など欧米の数百倍という例もある。つまり、健康に影響が出る可能性があるとされる量に対して、食品に残留しても良いという薬物の量が日本では欧米に比べて高い。そのため、残留基準を守った食品を食べていても、一日摂取許容量を越えてしまうことが十分あり得る。

 国の定めた基準をクリアしているからと悠長なことを言っている場合ではないのではないか。



 農薬の残留量が高いと思われる食品を長期間、大量に摂取したことに起因すると思われる患者やその症状についての報告がある。

全身倦怠や頭痛、震えおよび記憶障害を訴えて来院した患者の半数が、来院前の数日間、果物や茶飲料を摂取しており、果物や茶飲料の摂取をやめたところ、1ヶ月以内に症状が改善した。こうした患者の多くは国産の果物を1日に500g以上、茶飲料を500mL以上摂取していた。


 日常的にガブガブ常飲することを目指す上で体内に蓄積することを考えれば、これは見過ごせない。第一、ガスマスクや防護服を着て散布するものを人の体内に入れることがそもそも感覚的におかしいだろう。

 香りの低下や、健康被害のこの状況を考えれば使用すべきではない。





次回からはおよそ3回にわたって肥料の多投についてお話します。

個人的には農薬よりもよほど重要だと考えており、雅南の根底にある考えなどにも深く通じる内容になります。

是非お読みください。





次回「肥料の多投が茶や人体に与える影響1」



------------------------------------------------

香りと飲みやすさにこだわった

日本人のソウル飲料「番茶」は下記URLからご購入頂けます。

是非仕事の、勉強の、遊びの、人生のお供に...。



 
 
 

最新記事

すべて表示
番茶~日本人のソウル飲料~(12/12)「日本人の日常茶には番茶」

〇終章 おわりに 私は番茶こそ1000年先も残っていくものと信じている。 その理由は、番茶は地味だがあっさりしているからだ。現代はあまりに刹那主義が過ぎるところがあることは触れた。刹那的なものはおよそ刺激が強くなる。桃や李の花は華やかで美しいが、松や柏が四季を通じて青々とし...

 
 
 

Comentários


© 2020-2023 Ganan

  • Facebookの社会的なアイコン
  • Twitter Social Icon
  • Instagram Social Icon
bottom of page