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番茶~日本人のソウル飲料~(6/12)「肥料の多投が茶や人体に与える影響1」

  • 執筆者の写真: s.kazuki
    s.kazuki
  • 2021年11月20日
  • 読了時間: 5分

肥料について

 

 こちらも主に茶樹にストレスをかける点から肥料は最低限であることが望ましい(無肥料が理想)。

(※ここでいう「無肥料」とは、肥料分が一切入っていないというわけではなく、「栽培過程において人為的に肥料分を与えていない」こととする)

 肥料を与えすぎると・・

 1.香りが失せる(→ストレスがかからなくなるから)

 2.飲み口が重く、ドロッとした茶になる(→アミノ酸由来の旨みが多過ぎるから)

 3.硝酸塩による健康被害の懸念が大いにある

  (→体内に取り込まれると有害物質を生成するから)

 4.カテキンなどのポリフェノール量が減少する

  (→テアニンなどのアミノ酸合成に忙しく、生成がなされないから)

 5.保存が利きにくく、劣化が早くなる(→アミノ酸が多くなるから)

 


 化学肥料は元より、有機肥料であっても「窒素肥料」(とりわけ動物由来の有機質の窒素肥料)を多く与えることに問題がある。これによって一気に成長が促進され茶葉は大きくなるが、細胞自体が肥大化したに過ぎない。大きくなるのは良いことのように思われるが、その分細胞自体が脆くなる。また、飲むと水っぽく気抜けしたようになってしまい、品質にも大きく影響する。

 したがって、使用するにしてもアシなどの分解がゆっくりな自然素材であることが望ましい。

 また、肥料の多投は硝酸塩の多量摂取に繋がり、がんや糖尿病、アトピー性皮膚炎、アルツハイマー病などを引き起こす原因と考えられている。

 この点で「有機栽培」「無化学肥料」というのは確かに慣行栽培よりは良いが、これを謳っているからといって直ちに茶の品質がよく、体に良いという訳では決してない。

―香りへの影響

 茶の香りは、茶樹にストレスを与えることで良くなるのは農薬のところでも触れた。

これについて、再び京都大学名誉教授である坂田完三さんの論文が簡潔明瞭なので引用する。

 「無肥料で育てた場合、茶樹にはより多くのストレスがかかり、茶樹がこのストレスに耐えて生き残るために種々の方策を整えるが、その中により多くの香気成分を生成できる準備が入っていることは容易に想像される。その結果、無施肥の場合は単に悪い香りが生成することを抑えるばかりでなく、より多くの香り成分の生成に繋がって、結果としてより香り高い茶が生み出されているものと推測される。」

 烏龍茶の故郷、福建省の武夷山では肥料を与え過ぎると香りが悪くなることから、無肥料または最低限だ。それ故、日本の茶園と比べると貧相な茶樹に見えるが、香り高い茶が生まれている。何事も甘やかし過ぎは良くないのである。

 また肥料の多投は、色が濃くなりドロッとしたような重い茶になる。いわゆる「旨みのあるお茶」だ。

これは飲んだ時の”えぐみ”にも繋がり、香りも肥料由来のただ甘ったるいもので、一瞬で消えてしまう。当然、飲みにくく爽快感などは感じられない。

 肥料を与えすぎると、香りも飲みやすさも失われる傾向にある。

―人体への影響

 化学であれ有機であれ肥料(特に窒素肥料)の多投は硝酸塩の多量摂取に繋がり、がんや糖尿病、アトピー性皮膚炎、アルツハイマー病などを引き起こす原因と考えられている。とりわけ国民病の一つである糖尿病に関しては、硝酸塩が血糖を下げるインスリンの分泌を阻害する原因としても考えられている。

 さらに1956年にはアメリカにおいて、裏ごしされたホウレンソウを離乳食として摂取した赤ん坊が硝酸塩中毒にかかり、酸欠状態になった後チアノーゼを起こし、死亡してしまった「ブルーベビー事件」なるものがあった。赤ん坊が口から泡を吹き、顔が紫色になったかと思うと30分もしないうちに息絶えてしまったこの事件で278人中39人が死亡した。

 硝酸塩は一般的に食物や飲料から摂取される。イギリスの研究機関によれば人間が硝酸塩を取り込むのは、飲料水から70%となっている。硝酸塩が体内に取り込まれると、代表的なものとして以下の症状を引き起こす危険性がある。

①チアノーゼ

体内に取り込まれた硝酸塩は亜硝酸に還元される。この亜硝酸が血中のヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化させる。これにより、血中酸素の運搬が上手くいかなくなり酸欠を起こし、チアノーゼや呼吸障害を引き起こす。



②発がん性

体内で還元された亜硝酸と肉や魚に含まれる二級アミン類が胃の中で結合し、ニトロソアミンが生成され、これが発がん物質となる。これは、変異原性(*3)のある物質で、食道がん、肝臓がんなどのリスクが高くなる危険性がある。

〔*3:生物の遺伝情報(DNAの塩基配列あるいは染色体の構造や数)に不可逆的な変化を引き起こす性質のこと。 変異原性は放射線や紫外線、環境汚染物質のほか、食品の加工調理中に生成する物質などにも認められており、細胞がん化の誘発因子として知られている。〕





③糖尿病

胃の中などで生成されたニトロソアミンがインスリンを分泌する膵臓の細胞を傷つける。これにより、インスリンの分泌が阻害され血中糖度が上昇し、糖尿病に繋がる原因と考えられる。日本の糖尿病患者は約328万9000人いる。そのうち、インスリン量が少ないことに由来する「Ⅱ型糖尿病」は95%の約312万4550人と過去最多となっている(厚生労働省『2017年患者調査の概況』)。



 

 一般的に糖尿病はそのものより、合併症が恐ろしいと言われる。

 網膜症(眼底出血)、末梢神経障害(足のしびれ)、腎障害の三大合併症になると慢性透析(*4)へと至る可能性がある。

糖尿病患者とともに人工透析の患者は年々増加している。日本透析医学会の2019 年末の施設調査結果によると、透析患者数は 34万4640 人に達し、人口百万人あたりの患者数は 2732 人であった。

〔*4:透析とは、腎臓の働きの一部を人工的に補う治療法。 腎臓の主な役割は、ごはんを食べたり、水を飲んだりすることによって体に溜まった余分な水分や塩分、老廃物を尿として体の外に出すこと。〕

 

 透析患者数は1968年から毎年増えており、2019年までの直近10年だけでも凡そ5万4000人増えている。それに伴って死亡者数も2019年で3万4642人とこちらも毎年増え続けている。これは現代日本の重要な問題ではないだろうか。

このように、1日における飲料摂取でのお茶の役割を考えれば、硝酸塩摂取の問題は決して軽視できない問題だ。






次回は今まで度々触れてきた“硝酸塩”についてお話します。



次回「肥料の多投が茶や人体に与える影響2-硝酸塩について-」



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