番茶~日本人のソウル飲料~(7/12)「肥料の多投が茶や人体に与える影響2-硝酸塩について-」
- s.kazuki
- 2021年11月29日
- 読了時間: 4分
―硝酸塩について
ここまで度々出てきた硝酸塩についてようやく詳しく触れる。
硝酸塩とは、硝酸態窒素が結晶化したものをいう。植物が育つためには、窒素、リン酸、カリウムが必要と言われる(植物が育つための3大栄養素)。特に、窒素は種が発芽したあと、葉や茎を生長させるのに大切とされている。
しかし、植物は窒素をそのままで吸収することはできないので、吸収できる形にする必要がある。植物が窒素を吸収するまでの過程は下記の通り。
窒素
↓ 微生物(根粒菌や放線菌)の活用
アンモニア態窒素
↓ 硝化菌の作用
硝酸態窒素
↓ 土壌中にある微量金属と結合して結晶化
硝酸塩
↓ 液体に溶ける
硝酸イオン → 吸収
植物は「硝酸イオン」になって初めて、 水と一緒に根から吸収することができる。 吸収された硝酸イオンは、体内の酵素や光合成の働きによって、生長に必要なアミノ酸やタンパク質に合成されていく。
ただし、この硝酸態窒素が高濃度になることが問題だ。
土壌中に硝酸態窒素が多く含まれると、植物は必要以上にこれを吸収し、茎葉に蓄える。植物は硝酸態窒素が過剰に供給されると、急激に細胞を大きくする。 人間がカロリーの高い食事を摂りすぎて太ってしまうのとよく似ている。硝酸態窒素の濃度が高くなった植物を調べると、草丈や大きさの割に軟弱で病気に弱く、早く腐敗しやすくなる。さらに、多量に生成されるアミノ酸やタンパク質を狙い、虫が集まりやすくなる。
だから、農薬が必要になってくる。
「虫がつくのはそれだけ美味しいから」というのは詭弁で、過剰な肥料分に虫が大量発生しているだけともいわれている。実際、肥料を抑えた茶園にはあまり害虫が寄り付かず、共生できる分だけの数の虫しかいない。
硝酸態窒素は水によく溶け、肥料として速効性がある反面、陰イオンであるため土壌に吸着されにくく、水によって流されやすい性質がある。
この性質から窒素肥料の多投によって、植物や土壌では吸収しきれず、地下水にまで流れ込んでいる。その地下水が飲料水やそれを使った作物、魚などを介して再び我々の体内に入ってくる。これを避けるためにも、施肥量は最低限であることが望ましいのだ。
余談だが、汚染された地下水は川に流れ込み、やがて海に出て行く。すると海ではプランクトンが汚染物質を食べるために大量発生し、その呼吸熱で海温が上がり、台風が発生していく。
近年の強烈な台風などの関係性もないとはいえないのではないか。
硝酸態窒素を少なくするには施肥量を最低限にする他にも、アンモニア態窒素で硝酸化を抑える方法もある。アンモニア態窒素は陽イオンであるため、土壌に吸着されやすい。また、高温多湿の場合はアンモニア態窒素がアンモニアガスとなって、土壌から揮発されやすい性質だ。よって、硝酸化成を可能な限り抑え、窒素をアンモニア態にとどめることによって、地下水に溶けだす硝酸態窒素量を減らすことも可能である。
アンモニア態窒素から硝酸態窒素に転換するには一定の条件がある。
① 亜硝酸生成菌と硝酸生成菌の存在。これらの微生物がないと、反応が起きない。
② 土壌温度>20℃。土壌温度が低いと、亜硝酸生成菌と硝酸生成菌の活動が鈍くなる。
③ 土壌 pH5.5~7.5。強酸性土壌(pH<5.0)及び強アルカリ性土壌(pH>8.0)は微生
物の活性を抑制する。
④ 充分な土壌水分と酸素がある。転換には好気性環境(*5)と水分が必要である。
〔*5:一般的に酸素が存在する条件が好気的条件、酸素がまったくない条件が嫌気的条件とされている。これらのような条件の環境をそれぞれ好気性環境、嫌気性環境という。〕
作物は元来アンモニア態窒素と硝酸態窒素のどちらも吸収できるが、窒素源によって生育が異なる。多くの畑作物は単独の窒素源として硝酸態窒素を与えたほうが生育がよい。一方、アンモニア態窒素を好む好アンモニア性植物もあり、水稲、チャがその代表的な作物である。
このことから茶の生育面でも、硝酸態窒素ではなく「アンモニア態窒素」が良いことがわかる。
窒素肥料の多投は、硝酸塩を多量摂取させるだけでなく、茶の良い成分まで消してしまう。1章のメリット4でも述べたが、細胞の生長ばかりにエネルギーが割かれて、テアニンなどのアミノ酸をカテキンなどのポリフェノールにすることが妨げられてしまう。わざわざ肥料を投入する手間をかけても、見た目が大きく濃くなるだけで健康効果が薄くなるのでは消費者心理としてはいかがなものだろうか。
次回「肥料の多投が茶や人体に与える影響3-品質について-」
前回、今回と長々とお話してきたので、次回は相当サクッと終わります。
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