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  • 執筆者の写真s.kazuki

釜炒り番茶の製茶

更新日:2022年2月3日


先日、クラウドファンディングでご支援いただいた資金で

静岡県牧之原の茶畑へ製茶のお手伝いと現地仕入れに行ってまいりました。



製茶を初めから行うのは初めてで、思ったよりも体力を使いました。

なにより、萎凋(いちょう)そのものをする生産家も日本においてはとても少ないですが、さらに番茶に萎凋を施している生産家はその中でも極めて稀であります。


とにかく番茶にどのように萎凋をかけているのか、ワクワクしながら勉強させてもらいました。




釜炒り番茶の製茶工程はざっと以下の通りです。

1.茶葉を刈り取る

2.萎凋(香りの発揚)

3.殺青(発酵を止める)

4.揉捻(水分を均一に揉み込む)

5.水乾(水分を飛ばす)

6.釜炒り(さらに水分を飛ばす)

7.乾燥(仕上げ)




今回は、「森1号」と「藤かおり」という品種の番茶をそれぞれ作りました。


藤かおりは花のような少しクセのある香りが特徴がで、中国茶に少し近いです。

森1号は藤かおりの亜種のようなものですが、藤かおりに比べると少し香りが弱く感じますが、優しい口当たりが特徴です。






左が森1号、右が藤かおりです。

光の当たり方などでこう見えるのではなく、品種によって視認出来るほどの見た目の違いがあるのが分かります。




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1.茶葉を刈り取る





午前中に茶葉を刈ります。

ここは標高約200mの平地なので、乗用機械での刈り取りが可能です。

刈り取った茶葉を生葉と呼び、今回は約40kgあります。

これを製茶するとおよそ1/4~1/5になるので、これで8~10kgの番茶が出来ます。


慣行農法の市販ですぐに手に入るお茶は、数百kg単位などで作ります。

今回の番茶は1度の製茶にしては大変少ない量です。


刈り取った葉は既に品種の特徴でもある少しフルーティな香りが奥から香ってきます。




2.萎凋(最重要!!!!!)


クラファンの中でも少し触れた萎凋(いちょう)。

刈り取ったらすぐに風通しのいい場所で微発酵を促します。

萎凋には大きく

太陽光に晒す「日干(日光)萎凋」と

室内などの日陰で行う「室内萎凋」

の2種のやり方があります。


煎茶の場合だと室内萎凋だけで足りることが多いのですが、今回は日干萎凋→室内萎凋と2段階を経ます。

理由として、番茶は新茶に比べて葉が少し堅くなっているので、萎凋の進むスピードもそれだけ時間を要するからです。




(これで約40kgの生葉になります)



日光に晒し、定期的に様子を見ながら攪拌していきます。


こうすることで、水分欠乏ストレスと葉同士が擦れて細かい傷がつくことによる裂傷ストレスに茶葉が晒されることになります。

このストレスによって、花のような香りが生まれます。

も合わせてご覧ください。




日光萎凋がある程度進んだら、風通しの良い日陰でさらに放置します。

日光萎凋→室内萎凋の工程で約4~5時間位かかります。



この時点で花のような、フルーツのようなフルーティな香りがしています。



この萎凋という技術は実は結構シビアで、やりすぎると少し紅茶などとは別の発酵が進み過ぎた嫌な感じがする香りになり、丁度いい所で見極めるのが難しいです。

農家さん曰く、「年によっての出来、その日の天気、気温、湿度によっても変わるので匂いの感覚で覚えるしかない」と仰っています。



時間がかかり、体力を使い、感覚を頼りに行う「萎凋」。

生産効率的にはしない方がいいのですが、この一手間が香りの良さに繋がっています。




3.殺青(さっせい)


萎凋を施したら、茶葉を加熱して発酵を止める作業へ移ります。

今回は約230℃のドラム式機械で10分熱を加えます。一度に出来る量は約3kgほどなので、数回に分けて行います。






殺青が終わった茶葉は、熱を加えたことにより少し湿っているので、塊を解すように葉を振るって冷まします。




4.揉捻(じゅうねん)


冷ました茶葉を今度は揉捻機で揉捻していきます。

揉捻とは、上から茶葉に圧力をかけて揉み込み、茶葉含有水分の均一化を図り、飲む時に成分を出やすくさせます。





一度に出来る量は約9kgで、およそ20分間ずっと写真の茶色い胴の部分が回り続けます。


細胞が破壊されるからか、さらにフルーティな香りが加工場に広がってきます。





5.水乾


揉捻で水分を均一にしたら、再び熱を加えてさらに水分を減らしていきます。

約160℃で30分行います。







出来上がったらここでも水分を均一にする為に冷ましておきます。







フルーティさに、香ばしい香りも少し付加されていよいよ釜炒り茶らしくなってきました。





6.釜炒り


水分をある程度飛ばしたら、釜で炒っていきます。釜で炒ることで、香ばしい香りが出てきます。








この時強く炒りすぎると、ほうじ茶のような焙煎香がついてしまうので、比較的低い温度で約90分ほど炒ります。

1度で炒れる量は約3kgほどです。










この段階でほぼ製品の香りになります。



7.乾燥


締め炒り後に冷ましてから、最後に棚乾燥機を使って極限まで水分を減らして完成となります。


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これらの全工程は2~3日かかります。

特に釜炒り茶は、作業効率がよくないと言われているのですが、これは釜で一度に出来る量が少ないからです。

大型の機械であれば量産は出来ますが、それだけ荒い仕事になりやすく、少ない量の方がより丁寧に行き届く製茶が出来ます。


だからこそ、通常の量産型よりもより香りの良い逸品に仕上がります。



あくまで釜炒りにするには、もちろんこちらの方が断然香りがいいからです。



この理由については、現在明確にはなっていません。しかし、ある論文を読んだ時に、蒸しと比べて釜炒りの方が香り成分であるゲラニオール量が多いというデータがあることから、そこに由来しているのではないかと私は考えています。





そして、今回私がお手伝いさせていただいたこの商品は、6月下旬頃に取り扱い予定です!!!


それまでもう少々お待ちくださいm(_ _)m







p.s.

帰り際にご厚意で「藤かおり」の苗木を1株譲っていただきました。

現在、ベランダで育成しています。





順調に育って収穫できるまでおよそ2~3年。

それまでまずは会社が続いていられるように頑張ります(・ω・)


雅南 鈴木

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